2021年8月。
真夏の陽ざしが水面にきらめく中、銀座東作の竹竿を手に佃掘へ向かった。
職人が一本ずつ手仕上げする中通し竿は、手に取るだけで違いがわかる。
握ると竹の温もりが吸い付くように手になじみ、軽やかでありながら芯の強さを感じる。
そのしなやかな感触に、釣り人としての心が高鳴る。
佃掘という釣り場

佃掘(つくだぼり)は、江戸時代から続く東京湾の入り江のひとつで、今も昔ながらの風情を残すハゼ釣りの名所。
都営大江戸線「月島駅」から徒歩5分という都会の真ん中にありながら、水辺に立つと時間の流れがゆっくりと変わる。
ビルの合間に静かに息づく東京の釣り場だ。
仕掛けは脈釣り
今回は、銀座東作の中通し竿で挑んだ。
脈釣りのシンプルな仕掛けが竹竿の特性を最大限に引き出してくれる。
エサをつけ、ゆっくりと水底に落とす。
ウキは使わず、指先に伝わるわずかな重みでアタリを取る。
竹竿ならではのしなりと感度が、ハゼとの呼吸を合わせるように響いてくる。
名品と呼ばれる理由

銀座東作の竹竿は、単なる道具ではなく手仕事の芸術品だ。
見た目の美しさだけでなく、握った瞬間に感じる絶妙なバランスと感度。
微細なアタリさえ逃さず、まるで魚の動きを掌で感じ取るように伝えてくれる。
そしてこの竿を出していると、必ず誰かが声をかけてくる。
「それ、東作の竿ですか?」
そこから生まれる会話がまた楽しい。
地元の常連やベテラン釣り師との交流も、竹竿がつなぐ人の縁だ。
竹竿ならではの釣り味

カーボンロッドに比べ、竹竿はしなやかで柔らかく、ハゼの小さな抵抗や動きまでもが指先に伝わってくる。
魚の重みを受け止める瞬間の“間”が心地よく、まるで竹と魚と人がひとつになるような感覚。
この感触は、現代の素材では決して再現できない。
釣果と味わい

この日は数十匹のハゼが釣れた。
小気味よいアタリと、竹竿を通して伝わる生命の鼓動を楽しんだあと、持ち帰って天ぷらに。
薄衣の中でふっくらと揚がった身は、ほのかな甘みと香ばしさが広がる。
釣り人だけが知る、贅沢な夏の味だ。
竹竿がつなぐ時間
銀座東作の竹竿は、釣果を上げるための道具ではなく、自然と人、そして文化をつなぐ一本の橋のような存在。
手にした瞬間から釣りが始まり、仕舞うまでが物語になる。
佃掘の静かな水面に映る空とともに、その竹のしなりが今も心の中で美しく響いている。
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