2022年5月。
初夏の風が心地よく吹き抜ける頃、テナガエビシーズンが到来した。
ゴールデンウィークの晴れた日に、赤羽岩淵水門へテナガエビ釣りに出かけた。
南北線の赤羽岩淵駅から歩いて20分。
荒川と隅田川の分岐点にあるこの場所は、テナガエビ釣りの聖地として知られている。
テナガエビ釣りのメッカ「赤羽岩淵水門」

荒川の流れを調整するために造られた赤い水門。
現在は使用されていないが、その存在感は圧倒的だ。
水門の上を渡って中之島へ行くと、そこはまるで都会の中の小さな楽園。
島の周囲は大きな石で護岸されており、その隙間がテナガエビの絶好の住処となっている。
5月から8月にかけて、この場所は多くの釣り人で賑わう。
河川敷にはトイレもあり日中は使用できるが、夕方以降は少し離れたコンビニを利用しよう。
仕掛け

赤羽岩淵の水辺で味わう駆け引き

島の周りの岩の間に仕掛けを落とすと、岩陰からテナガエビが姿を見せる。
赤虫をハサミで抱え、じりじりと岩陰に戻っていく。
その慎重な動きがなんとも愛らしい。
テナガエビが見えないときでも、しもりウキがかすかに動いたり、スッと横に滑るように動く。
それは、赤虫を咥えて巣へ運んでいるサイン。
合わせのタイミングが決まった瞬間、小さな体で跳ねるように暴れ出す。まるで“エビキック”。
RGM spec.3 OT 120は、やわらかくデリケートなのべ竿がしなる。
この一瞬の駆け引きが、たまらなく面白い。

たまに釣れるヌマチチブやカニ、時にはブルーギルまで混ざる。
ブルーギルが掛かると暴れ方が尋常ではなく、小さな竿ではまるで格闘のようだ。
江戸の味を再現する:テナガエビの蒲焼き
釣ったテナガエビは、江戸の粋を感じる食べ方で。
池波正太郎の『剣客商売』にも登場する調理法を試してみた。
醤油とみりんを合わせたタレを作り、焼きながらハケで何度も塗る。
香ばしい香りが立ち上がり、最後に山椒をひと振り。
これが驚くほど旨い。
外はカリッと香ばしく、中はぷりっとした弾力。
江戸の庶民が夏の夕暮れに味わっていた川のごちそうが、現代によみがえる。
都会の中の小さな自然
赤羽岩淵水門は、東京に残された貴重な自然のひとつ。
水門の赤、風の匂い、ウキの揺れ。
どれもが日常から少し離れた静かな時間をくれる。
テナガエビ釣りは、派手さはないけれど、確かに“情緒”のある釣りだ。
のべ竿一本で味わう、江戸の夏の風物詩。
それが、赤羽岩淵水門でのテナガエビ釣りの魅力だと思う。
